ポルシェ911(993)とは?最後の空冷911を7年所有してわかった魅力と全11グレード

993 Porsche

ポルシェ911(993)は、911最後の空冷モデルです。

私は前期型の993 Carrera・4速Tiptronicを約7年間所有し、購入時の6万km台後半から、売却時の9万km台半ばまで乗りました。

993の魅力は「最後の空冷」という希少性だけではありません。コンパクトなのにボリュームのあるリアスタイル。「ドッドッドッ」と聞こえる空冷フラット6。そして細いAピラーとドアミラー前方の小さな三角窓、立ち気味のフロントガラスから見える独特の景色。実際に長く所有しても、993には普通のクルマとは違う特別感がありました。

この記事では、993の特徴や964から進化したポイント、全11グレードの違いを、実際の所有経験も交えながら紹介します。

この記事を見ていただきたい方
  • 空冷ポルシェモデルに興味があるが、どのようなラインナップ(グレード)があるのかがわからない方
  • ラインナップ名(グレード名)は知っているが、それぞれの特徴までは知らない方
結論
  • 最後の空冷エンジンモデルという唯一無二の特徴を持ったネオクラッシくなスポーツカー
  • 全11種類のグレードが存在
  • オススメは「911カレラ4S」と「911タルガ」
  • 特に「911カレラ4S」が魅力的ですが、価格・メンテナンスを考慮すると「996型のカレラ4S」の検討も候補に入れたい所

ポルシェ911(993)とは?

1994年〜1997年に製造された最後の空冷モデル。

これまでのカエル顔を、空気抵抗を抑えるために変更したことが一番の特徴となっています。

また、964型まで採用されていたセミ・トレーリングアーム形式を、新開発のマルチリンク方式に変更したことで、RRとしては極めて高い操舵安定性と、改善された乗り心地を手に入れました。

なお、スタイリングは近未来的に変更されましたが、車内は大きな変更がなくポルシェを着る感覚は変更ありません。

その他の主な先代(964型)からの相違点は以下の通り。

エクステリア
(フロント)  
・空気抵抗を抑えるために、楕円形型ヘッドライトを大きく傾けて装着
・フロントのフェンダーラインの盛り上がりがなだらかに変更
エクステリア
(リア)
・245/45ZR16 という太いリアタイヤを履くため、リアフェンダーを拡大
・ルーフエンドにルーフエクステンションを装備
・エキゾーストパイプを長方形断面を採用(96年式〜)
・全幅が1660mmから1730mmへ拡大
・車重も20kg増加
オートマチック  ・ティプトロニックSを採用
・ステアリングホイールのスポーク部分にシフトスイッチを設置(95年式〜)
エンジン・可変インジェクション・システム ヴァリオラムを採用(96年式〜)
・パワーは 285ps/6100rpm 34.7kgm/5250rpm(96年式〜)
サスペンション・リアを新開発の マルチリンク方式 へ変更。コーナリングが非常に安定
・フロントは変更なし
ブレーキ・4輪とも4ピストンの固定アルミキャリパーを採用
・ディスクプレートはドリルベンチレーテッドタイプを採用
・ボッシュ製のABS5アンチロックシステムを採用
ライト・ガス放電ランプを使用した リトロニック・ヘッドランプ・システム を採用
・約2倍の明るさを実現しながら、消費電力は30%削減
(96年式〜。ターボに標準装備、他はオプション。)

スペック以上に、実際に所有して印象に残っているのが993のサイズとスタイルです。現代の911と比べるとコンパクトですが、リアまわりにはしっかりとしたボリュームがあります。特にリアから見たスタイルは、今見ても993ならではだと思います。

細いAピラーとドアミラー前方の小さな三角窓、そして立ち気味のフロントガラスによって、運転席から見える景色がとても開放的でした。エンジンをかけると最初に「ドワーン」と音が立ち上がり、その後リアから「ドッドッドッ」という空冷フラット6の音が聞こえてきます。夜の信号待ちでは「チョロチョロ」という音まで聞こえることがありました。

リアのフードを開ければエンジンがあり、一般的なクルマならエンジンがあるフロントを開ければ荷室になっている。スタイル、音、運転席からの景色、RRという構造まで、993には普通のクルマとは違うものがたくさんありました。

ラインナップ(グレード)

全部で11種類のグレードが存在していました。それぞれ特徴を掲載していきます。

911カレラ・クーペ

911カレラ
新型サスペンションの効果は絶大
・1994年に登場
・もっともシンプルな後輪駆動モデル
・新設計のマルチリンクサスペンションを装備
・乗り手を選ばなくなったとまで言われるほど高い安定性を確保
・1995年からティプロトニックが、ステアリング上にスイッチの付いた「ティプトロニックS」へ変更

私が約7年間所有したのも、このCarreraです。前期型の4速Tiptronicで、購入時は6万km台後半、売却時には9万km台半ばでした。特別なグレードではありませんが、空冷エンジン、RR、993のコンパクトなサイズ感を楽しむにはCarreraでも十分だと思います。

911カレラ・カブリオレ

911カレラカブリオレ
フルオート13秒
・1995年に登場
・屋根を閉めている状況ではクーペモデルと同様のパフォーマンスを発揮
・最高速度は270km/h
・強固なスチールフレームに支えられた電動ソフトトップを採用
・屋根の開閉時間は13秒(車両停止状態でのみ作動)
・リアウィンドウは透明プラスチック・ウィンドウを採用。ウィンドウのみの交換が可能

911カレラ4・クーペ

911カレラ4
4WDシステムを一新
・1995年に登場
・カレラクーペ・カブリオレ異なり排気量は3800ccに拡大
・この辺りが993型のグレードがわかりにくい要因
・新たにビスカス・カップリング式4WDシステム(前後トルク配分の最適化システム)を採用
・走行状況に応じて前後トルク配分を最適化
・RRとの重量差がそれまでの約半分に当たる50kg程度に抑えられた

911カレラ4・カブリオレ

・オープンボディはカレラ/カレラ4に設定
・ごく稀にターボボディのカブリオレが市場に存在

911タルガ

911タルガ
スライディングルーフに大変身
・1996年に登場
・カブリオレをベースに開発
・屋根は特殊な着色を施された断熱ガラスでできており、ルーフ全体がボタンひとつでリヤウィンドウ内側に収納される仕組み(これまでは着脱式)
・このガラスは熱伝導が少なく紫外線も防いでくれるため、一年中快適なドライブを楽しむことが可能
・日差しの強い時にはブラインドを閉じれば直射日光を浴びることもない
・オープンボディと比較しクローズドボディであるため室内の静粛性が高い
・屋根を閉めた状態ではカブリオレとは異なりクーペ同等の静粛性を確保
・一方、カブリオレベースであるため、一見クーペのように見えるがクーペよりは剛性感が低い

911カレラS

911カレラS
いわゆるターボルック
・ターボと同じワイドボディを採用
・左右に分割されたリアスポイラーやカップデザインの17インチホイールなどを装備
・エンジン・シャーシ・ブレーキは、911カレラ・クーペと同じであるためターボルックという説明が一番わかりやすい
・ワイドボディへの対応はスペーサーによるものであり、この点は賛否両論がある

Carrera Sはワイドなリアスタイルが魅力です。個人的にはベスビオ系のボディカラーをまとったCarrera Sにも惹かれます。ただ、現在の価格差まで含めて自分が選ぶなら、通常のCarreraかCarrera 4Sを選びます。993 Carrera Sの特徴はこちらの記事で詳しく紹介しています。

911カレラ4S

911カレラ4S
エンジン以外はターボ仕様
・カレラ4がRSと同様の3.8Lエンジンなのに対しカレラ4Sは3.6Lエンジンを搭載
・ターボと同様のフロントまわりのデザイン・赤いキャリパーのブレーキシステムを採用
・ターボと同様のリアフェンダーの張り出し・18インチホイール・オールレザーインテリアなどが標準装備
・車高が、フロント10mm・リヤで20mm下がっている
・カレラ4と同様、ウィンカーレンズカバーのカラーがフロントが白・リヤが赤
・RRのカレラと比較して+80kgも車重が重いにも関わらず0-100km加速は5.3秒とRRのカレラを0.1秒凌ぐ(最高速は-5km)
・カレラ4Sにオプションで装着可能な巨大なターボウィングを取り付ければ、外観上ターボと全く見分けることができない
・ターボ用シャシーのポテンシャルを十分に味わえるため、ターボルック否定派からも一目置かれる存在であった

今、もう一度993を所有するなら、私が最も欲しいのはCarrera 4Sです。ワイドなリアスタイルに自然吸気の空冷フラット6、そして4WD。色ならターコイズブルーのような993らしいカラーにも惹かれます。もちろん価格差が大きければ通常のCarreraでも十分です。それでも「もう一度993を選ぶなら」という条件なら、私はCarrera 4Sを選びます。

911ターボ

911ターボ
ツインターボ+4WD。ターボの転換点
・1995年に4代目のターボモデルとして登場
・最大の特徴は4WDになったこと
・ツインターボ化した3.6Lエンジンは、408ps/55.1kgmのスペックを叩き出す
・0-100km加速が4.5秒、最高速度は290km/hと高いパフォーマンスを発揮
・その他特徴としては、6速ギアボックス・競技用ブレーキシステム・新開発の中空スポークアルミホイール・リトロニックヘッドライトの採用など

911GT2

911GT2
後輪駆動+ターボのモンスター
・1995年のGT選手権を戦うために開発されたモデルで、911ターボを2WD化したマシーンという説明がわかりやすいモデル
・外観上はエアインテークを備えた2段式の大型ウィングの他、リベット止めされたワイドな前後ジェンダーが特徴
・競技専用のレーシングバージョンに加え、快適装備を付けたストリートバージョンも販売
・エンジンはターボ用に手を加えたM64/81型で、ストリートバージョンでも430ps/55.1kgmを絞り出す
・トランスミッションは専用品で、マグネシウムホイールを装着
・4WDのターボより200kgほどの軽量化もあり、0-100km:4.4秒 最高速度295km/hをマーク

911ターボS

GT2ユニットの4WD
・GT2と同じパワーユニットを搭載したスペシャルモデル
・GT2のストリートバージョンより快適なツーリングを楽しめるのが特徴
・GT2もラインナップされていたこともあり、安全かつ快適に超高速クルージンングが楽しめることを目指していた
・装備類が簡略化されることはなく、内装もほぼターボモデルと同様のまま
・エクステリアの差異はリアフェンダーにエアインテークを備えることと、リアウィングのエンブレム程度
・一番の魅力はGT2譲りのM64/81型430psユニットを搭載していること

911カレラRS

911カレラRS
硬派路線を貫いた空冷最終モデル
・3.6Lユニットのボアを2mm拡大することで3745ccの排気量を得た
・可変吸気システム ヴァリオラムがいち早く組み合わされることにより300ps/36.2kgmを発揮
・これに加え軽量化も徹底
・オーディオ・パワーウィンドウ・電動ミラー・セントラルロック・ヘッドランプウォシャー・遮音材を省略
・さらにアルミ製トランクフード・サイドウィンドウガラスの薄板化など、964RSと同様な手法を採り入れ車両重量を1320kgまで軽量化
・エクステリアはシャープなフロントスポイラー・固定式のトレイ型リアウィングを装備
・より硬派なクラブスポーツは2段式の大型ウィングを採用した他、コックピットにはロールゲージも備える

993を今買うなら前期・後期、どちらを選ぶ?

私が約7年間所有していたのは前期型でした。前期型でも993の魅力は十分に楽しめましたが、今もう一度買うなら、私は後期型から探します。

後期Carrera系ではヴァリオラムが採用され、最高出力も272psから285psへ向上しています。そして購入してから「やっぱり後期が欲しかった」と思うくらいなら、最初から後期を探した方がいいと思うからです。

ただし、現在の993はすでに約30年前のクルマです。前期・後期だけで判断するのではなく、最終的には個体の状態を優先します。詳しい違いはポルシェ911(993)前期と後期の違いでまとめています。

993を買ったら、よく乗ってほしい

これから993を買う人に伝えたいのは、「状態の良い個体を選ぶこと」と「買ったらよく乗ること」です。

私自身、複数台を所有するようになって993に乗る頻度が下がった時期があり、その後オイル漏れなどが気になるようになりました。993はガレージに置いて眺めるだけではなく、エンジンをかけ、空冷フラット6の音を聞き、実際に走ってこそ魅力が分かるクルマだと思います。

長期所有で感じたことは993を約7年間所有して感じた魅力、購入から売却までの経緯はポルシェカレラ(993)購入から売却までで詳しく紹介しています。

まとめ

993は「最後の空冷911」というだけでも特別なポルシェです。でも、約7年間所有した私にとっては、それだけではありません。

リアから見たスタイル。「ドッドッドッ」という空冷フラット6。コンパクトなのにボリューム感のあるボディ。そして細いAピラーと三角窓、立ち気味のフロントガラスから見える独特の景色。リアのフードを開ければエンジンがあり、フロントを開ければ荷室がある。乗っても、眺めても、普通のクルマとは違います。

今993を選ぶなら、私は後期型を中心に探します。通常のCarreraでも十分楽しめますが、もう一度所有するならCarrera 4Sを選びたい。そして状態の良い個体を選び、できるだけよく乗る。

速さだけなら現代のポルシェの方が上です。それでも993には、数字では説明できない唯一無二の魅力があります。私にとって993は、いつかまた乗りたいと思えるポルシェです。