Porscheは高い。
現在の911 Carreraは1,884万円。911 Carrera Sなら2,278万円です。一方、718 Caymanは948万円、Macanは871万円から。
なぜ、これほど高いのでしょうか。
実際にPorscheを所有し、911やBoxsterなどを乗り比べてきた私の感覚では、理由は単純に「高性能だから」でも「ブランド料だから」でもありません。
クルマそのものにお金がかかっている。生産台数にも限りがある。そして特に911には、高くても買う人がいる強いブランド力がある。
この3つを分けると、Porscheの価格が見えてきます。

Porscheは本当に「いいクルマ」なのか
まず、ブランドの話をする前に、Porscheというクルマそのものを見てみます。
Porscheによると、これまで生産されたPorscheの約70%が今も路上を走っています。911についても、累計100万台を生産した2017年時点で70%以上が走行可能な状態にあると説明していました。
新型車の開発でも、寒冷地、高温地域、高地、市街地、サーキットなど世界各地で耐久試験を行っています。2024年、Porscheが自動車事業の研究開発に投じた金額は約25億ユーロ。自動車売上高に対する研究開発費率は6.9%でした。
つまりPorscheの価格には、長く走らせるための設計や走行性能、研究開発にかけるコストが含まれています。
実際に所有していて、それを感じることもありました。たとえばジャッキアップしたとき、前輪だけを上げるつもりが、ボディがほとんどねじれず後輪まで浮いてきたことがあります。シートも見た目は意外なほどシンプルなのに、座ると身体が自然に収まる。
一方、スイッチ類には「意外と安っぽいな」と感じる部分もありました。
Porscheは、価格が高いから何もかも豪華というクルマではありません。お金をかける場所が、かなりはっきりしているクルマだと思います。
PorscheはMercedes-BenzやBMWほど大量には作らない

Porscheは2024年に世界で約31万台を販売しました。そのうちMacanは約8.3万台、911は約5.1万台。718 Boxster/Caymanはさらに少数です。
クルマの開発には、エンジンやシャシーだけでなく、安全性、電子制御、生産設備、認証など大きな費用がかかります。それを何十万台、何百万台で回収できるクルマと、数万台しか作らないスポーツカーでは条件が違います。
Ferrariほどの少量生産ではありませんが、Porscheにも量産だけでは価格を下げにくいスポーツカーメーカーとしての側面があります。
ただし、これだけでは911の価格は説明できません。
911が高いのは「作るのにお金がかかるから」だけではない

2019年、Berylls Strategy Advisorsの分析をもとにした報道では、911の利益率は約47%と推計されました。
これはPorscheの公式発表ではありません。Porscheは現在も911、Macan、Cayenneなどモデル別の利益率を開示していないため、「911 Carreraの利益率は50%」と断定することはできません。
それでも約47%という外部推計は興味深い数字です。もし911が単に「作るのにものすごくお金がかかるから高い」のであれば、これほど大きな利益率にはなりにくい。
911は、高いコストをかけて作るクルマであると同時に、高くても売れるクルマでもある。ここに911というブランドの価格決定力があります。
中古の911を見て「ブランド価値は残る」と思った
私が最初にPorscheを買おうとしていた頃、中古車サイトをかなり見ていました。
そこで印象に残ったのが911 Carreraです。古くても、安い911でも、300万円を切る個体をほとんど見かけませんでした。かなり安くても300万円台後半から400万円台。
これは現在の中古車相場の話ではなく、当時Porscheを探していた私自身の感覚です。
そのため私は、「911には、最後まで300万円くらいのブランド価値が残るのではないか」と考えていました。そう考えると、購入価格だけを見て「ものすごく高い」と考える必要もないのではないか。
BoxsterやCayenneとは少し違い、911には古くなっても「911であること」に値段が付いているように見えました。現在のリセールについては、ポルシェのリセールバリューが高い理由でも詳しく整理しています。
911はいつから、こんなに高くなったのか
2011年当時、BoxsterのMTは563万円、CaymanのMTは599万円でした。私自身も「BoxsterやCaymanは600万円くらい」という印象を持っていました。
同じ頃の997型911 Carreraは1,000万円を超えていたので、当時から400万〜500万円程度の価格差はありました。
現在は718 Caymanが948万円なのに対して、911 Carreraは1,884万円。差額は936万円です。
もちろん、為替や物価、装備、安全基準、性能向上などがあるため、この差額を「ブランド料」とすることはできません。ただ、911が以前よりも高い価格を受け入れられる商品になったとは感じます。
私自身、911の変化も実際に感じてきました。以前の911には、どちらかというと「知る人ぞ知るスポーツカー」という印象がありました。
PDKが登場した世代に乗ったときには、「ちょっと別格の、いいクルマになったな」と感じました。そして次の世代のCarrera Sに乗ったときには、「やっと1,000万円を超えるクルマになった」と思ったのを覚えています。
ですから、911がブランド力だけで値上がりしてきたとは思いません。商品そのものも確実に進化しています。
でも「911が高い=BoxsterやCaymanよりいい」ではない

ここは、実際にPorscheに乗って大きく認識が変わったところです。
乗る前の私は、BoxsterやCaymanにはどこか「911の廉価版」というイメージを持っていました。911までは買えない人が、安くPorscheに乗るためのクルマなのだろう、と。
でも実際にBoxster Sに乗ると、全然違いました。クルマとの一体感が強く、今でも非常に印象に残っています。
911には911の良さがあります。完成度の高さや明確な別格感を感じた世代もありました。それでも、同じ時代のBoxster Sと乗り比べたら、私はBoxster Sの方を気に入ったかもしれません。
価格が高いことと、自分にとっていいクルマであることは別です。
BoxsterやCaymanは「911が買えないから選ぶPorsche」ではありません。911はリアエンジン、Boxster/Caymanはミッドシップ。サイズも乗り味も違います。
Boxsterが好きだからBoxsterを選ぶ。Caymanが好きだからCaymanを選ぶ。実際に乗ると、それがよく分かります。
Porscheが高い理由は「いいクルマ」と「高く売れるブランド」の両方にある

Porscheが高い理由を一つに決めることはできません。
研究開発に多額のお金を使い、長く走れるクルマを作る。大手メーカーほど大量生産できないスポーツカーもある。ここまでは、いいクルマを作るために高くなる理由です。
一方、911には約47%という外部利益率推計があります。中古になっても911という名前に価格が付き、現在では911 Carreraが2,000万円近い価格になっても売れる。
これは、いいクルマだから高いだけでは説明できないブランドの価格決定力です。
現在の911 Carreraが約1,900万円という価格も、他のクルマが大きく値上がりした現在では理解できなくはありません。
それでも私には、Porscheは長い間「1,000万円くらいのクルマ」という印象が残っています。現在の911を見て、「これは2,000万円のクルマだ」と外見だけで感じるかというと、私はそこまでではありません。
それでも911を選ぶ人がいる。おそらく、それこそが現在の911の強さなのでしょう。
Porscheはいいクルマを作ることでブランドを育て、そのブランドがさらに高い価格を成立させるようになった。
ただし、その価格差がそのままクルマとしての優劣になるわけではありません。
私自身、911にもBoxsterにも乗ったからこそ、今はそう思います。
Porscheを選ぶなら、「一番高いPorscheはどれか」ではなく、自分はどのPorscheに乗りたいのか。
結局、それが一番大切なのだと思います。

