2002年にデビューしたポルシェのSUVであるカイエン。4代目がリリースタイミングで過去のモデルを振り返ります。
カイエンとは
1990年代後半、水冷化した911カレラ(996型)とボクスターの成功で業績を回復していたポルシェは、従来のスポーツカーとは違う新たな路線展開を模索。
その流れに乗って2002年にデビューしたのがカイエン。デビュー当時は「ついにポルシェがSUVを出した」と大きく話題になりました。
フォルクスワーゲン「トゥアレグ」と共同開発され、プラットフォームは共用されましたが、それ以外の部分はポルシェ独自の手で開発が行われました。
フォルクスワーゲンのチューンナップ版という見方もできたため、前評判は良いものではありませんでした。
ところが、実際に街で見かけるようになれば、そのまとっている雰囲気は間違いなくポルシェであったため、前評判は覆され結果大ヒットモデルとなりました。
グレードの構成としては、フォルクスワーゲンの基本設計を元にしたV6エンジン、928以来となるポルシェオリジナルのV8エンジン。
そしてV8エンジンターボというのが基本ラインとなり、その上で排気量アップや直噴化などの進化を遂げました。
特にターボのパワフルさはスポーツカー並みのパフォーマンスとなっており、カイエンの特徴の1つにもなっています。
初代モデル 前期型(955型 E1)
概要
2002年にデビューしたポルシェ初の4枚ドアモデルであるカイエンは、当初は4.5LのV8エンジンを搭載した自然吸気式のカイエンSとツインターボのカイエン・ターボがラインナップ。
約1年遅れてNAの3.2LV6を積むカイエンが、そしてターボSは3年以上遅れて登場。
いずれも6速ATのティプトロニックSを採用し、AWDシステムであるPTMは、トゥアレグの50対50に対して38対62というハンドリングも考慮した駆動トルク配分が基本となり、ポルシェのカイエンに対する本気がうかがえました。
グレード
カイエン
・最高出力:250ps、最大トルク:310Nm ・3.2LのV6エンジンはバンク角が15度と狭角なVW製シリンダーブロックを流用 ・シリンダーヘッドはポルシェ独自開発 ・6速ATが標準装備。受注生産で6速MTを選ぶことが可能 ・このあたりはVWのOEMでしょ?という噂にポルシェが対抗したもの ・PTMを備えたAWDシステムを採用 ・電子制御式の油圧多板クラッチをもつセンターデフも装備 ・ロック率はPTM(ポルシェ・トラクション・マネジメント)が自動制御 ・前後トルク配分は遊星ギヤを用いて、フロント:リヤ38:62に配分 ・0-100km/h加速9.7秒 ・最高速度214km/h
カイエンS
・自社開発の4.5LのV8エンジン ・345ps/420Nm ・0-100km/h加速6.8秒 ・最高速度242km/h ・当時のSUVとしては異色のグリルレスのボディは空力特性にも優れ、最高速度242km/hとスポーツカー顔負けのオンロード性能を誇る
カイエン・ターボ
・カイエンの最高峰モデルとなるのがターボ ・自社開発の4.5LのV8エンジン ・455ps/620Nm ・強大なパワーを受け止めるため、ライドハイドコントロールを内蔵した電子制御エアサスペンション、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)を標準装備 ・0-100km/h加速5.6秒 ・最高速度266km/h
カイエン・ターボS
・2005年に限定発売された、カイエン・ターボ・ハイパフォーマンスエディションの市販化版 ・ターボの過給圧を0.2barアップし、インタークーラーを効率化 ・自社開発の4.5LのV8エンジン ・525ps/720Nm ・2006年当時、カレラGTに次ぐポルシェで2番目にハイパワーなモデル(911ターボを上回る) ・0-100km/h加速5.2秒 ・最高速度270km/h
初代モデル 後期型(957型 E1-2)
概要
4年間で15万台以上という成功作となった初代の正常進化型として2006年に発表された初代後期カイエン。
洗練された印象のフロントヘッドライトをはじめとしたエクステリアの意匠変更に加え、全グレードにおいてエンジン排気量が拡大。
ボディは単なるフェイスリフトではなく、空力を刷新することでCd値を0.35に改善。
直噴化されたエンジンと相まって燃費性能を向上させたうえ、新たにPDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)を設定。
その他、電動テールゲートの採用など、細部にわたってリファインを実施。
エンジンラインナップは、V6/V8/V8ターボの3種類で先代と変わらなかったが、それぞれスペックを向上。
それに伴いパワーユニットのパフォーマンスが全体的に向上している一方で、ダイレクト・フューエル・インジェクションを採用したことにより各モデルの燃費は8%以上アップ。PTMの駆動トルク配分の変更は行われていない。
グレード
カイエン
・3.6LのV6 NAエンジン ・290ps/385Nm ・0-100km/h加速8.5秒 ・最高速度221km/h
カイエンS
・4.8LのV8 NAエンジン ・385ps/500Nm ・0-100km/h加速6.8秒 ・最高速度250km/h
カイエンGTS
・最強のNAモデル ・4.8LのV8 NAエンジン ・405ps/500Nm ・エクステリアはターボルックとなり、足回りは24mmローダウン ・コイルスプリングにPASMが組み合わされる ・0-100km/h加速6.5秒 ・最高速度251km/
カイエン・ターボ
・4.8LのV8ツインターボ ・500ps/700Nm ・0-100km/h加速4.9秒 ・最高速度279km/h(パワーキット装備時)
カイエン・ターボS
・2008年に追加されたカイエンのホットモデル ・吸排気系とマネジメントシステムをチューニング ・4.8LのV8ツインターボ ・550ps/750Nm ・0-100km/h加速4.8秒 ・最高速度280km/h
2代目モデル 前期型(958型 E2)
概要
フルモデルチェンジを受け、全長は48mm・ホイールベースも40mm延長されやや大型化されたものの、軽量素材を多用したことや超軽量アクティブ4WDシステムの採用によって、従来型比で180kgのダイエットを実現。
アイドリング・ストップ機構やエネルギー回生システム、ATの8速化などの恩恵により燃費性能は最大で23%向上。ポルシェとしては初となるハイブリッドモデルも用意。
不評だったインテリアの質感、精度を刷新したほか、ホイールベース延長によりリヤシートの居住空間を改善。インテリアはパナメーラに似たデザインに変更。
アイシン製8速ATの採用など、高級SUVとしての資質とオンロードでのスポーツ性能向上に重点が置かれているのが特徴。
最大のトピックは、ポルシェ史上初の市販ハイブリッド車となる1モーターのパラレル式ハイブリッド・システムを搭載したカイエンSハイブリッド。
このハイブリッドシステムはサルーンのパナメーラにも受け継がれ「ハイブリッドのポルシェ」というイメージを作り上げることにも成功。
グレード
カイエン
・NAの3.6L V6エンジン ・300ps/400Nm
カイエンS
・NAの4.8L V8エンジン ・400ps/500Nm
カイエンGTS
・NAの4.8L V8エンジン ・420ps/515Nm
カイエンSハイブリッド
・ポルシェ初の市販ハイブリッドカー ・3LV6エンジンとモーターの組み合わせ ・380ps/580Nm ・アウディS4用の3LスーパーチャージャーにトゥアレグV6TSIハイブリッドと共通の、パラレル式ハイブリッドシステムを搭載 ・走行状況に応じて様々なモードがセレクト可能 ・11.1km/Lの燃費を実現 ・CO2排出量を20%削減 ・排ガス性能も欧州のユーロ5と米国のULEV2基準に適合
カイエン・ターボ
・カイエンのトップモデル ・4.8L V8ツインターボ ・500ps/700Nm ・新しい8速ATを搭載したことでドライバビリティが大きく向上
カイエン・ターボS
・4.8L V8ツインターボ ・550ps/750NmNm
2代目モデル 後期型(958型 E2-2)
概要
パワーも燃費も向上。フロントのバンパースポイラーとボンネットフードや立体的なテールライトなどにより一層モダンなアピアランスを獲得。
コースティング機能の追加やアイドリング・ストップ機構の最適化、フロントのセンター・エアインテークの後方に設けられたフラップを開閉させラジエターの冷却効率を調整するシステムなどにより燃費がさらに向上。
またカイエンSとGTSはターボ化し排気量を減らすダウンサイシングを実施。
グレード
カイエン
・3.6LのV6 NAエンジン ・300ps/400Nm
カイエンS
・3.6LのV6ターボエンジン ・420ps/550Nm ・先代のSは4.8LのV8NAであったが、今回ダウンサイジングを行い、3.6LのV6ターボを搭載 ・最高出力を20psアップしつつ、低燃費化を実現 ・0-100kmは0.4秒も短縮
カイエンGTS
・カイエンSをベースとしたNAのトップモデル ・エンジンを4.8LのNAから3.6LのV6ターボにダウンサイジング ・3.6LのV6ターボ ・440ps/600Nm
カイエンS E-ハイブリッド
・2014年に発表された最新鋭のプラグインハイブリッドモデル ・既にパナメーラ譲りのプラグインハイブリッドシステムを採用 ・リチウムイオンバッテリーの性能を6倍に向上 ・容量は10.8kWhで18〜36kmの距離をモーターで走ることが可能 ・モーター出力も47psから95psへ2倍近くアップ ・最高で125km/hの速度までEV走行が可能 ・イメージカラーのアシッドグリーンに彩られたブレーキキャリパーや、同色がエンブレムに挿し色として加えられたことで、控えめながらハイブリッドであることをアピール ・急速充電には対応しておらず、200Vの普通充電でも2時間半弱でフル充電が可能な上、Eチャージモードで「走行しながら急速充電」が可能 ・3LのV6スーパーチャージャーとモーターの混合 ・416ps/590Nm ・0-100加速は5.9秒
カイエン・ターボ
・4.8LのV8エンジン ・520ps/750Nm ・0-100km加速は4.5秒と並のスポーツカーを凌駕する性能誇る
カイエン・ターボS
・ラインナップの中で最高峰に位置付けられるターボ ・4.8LのV8エンジン ・570ps/800Nm
3代目モデル
概要
ポルシェ独自のシャシー制御システムが満載。排気量を下げてターボを追加するダウンサイジング・テクノロジーを積極的に採用。
各種電子デバイスや快適装備類の充実にもかかわらず軽量化を徹底し、先代比で65kgのダイエットに成功。
電子制御式のロール安定化システムやチャンバーを3つ持ち備えたエアサス、アクティブ制御の4WD、そしてそれらを統合制御する最新の4Dシャシーコントロールなどハイテク装備が満載。
重量物の牽引を考慮してトランスミッションはATを継投。
グレード
カイエン
カイエン・プラチナム・エディション
カイエンS
カイエンS・プラチナム・エディション
カイエンSEハイブリッド・プラチナム・エディション
カイエン・ターボ
まとめ
ポルシェカイエンは2002年にフォルクスワーゲンと共同開発された、ポルシェ初のSUV。
フォルクスワーゲンとの共同開発ということで前評価は悪かったが、今となってはポルシェの経営を支える大黒柱まで成長。
これまでに3世代のカイエンが登場。フルモデルチェンジが行われるたびに軽量化されるなど、新しくなればなるほど進化。
エンジンの基本構成は、フォルクスワーゲン製V6エンジンとポルシェ独自開発のV8エンジン。
3代目がオススメではあるが、大きさが日本の道路事情にマッチしていないため、2代目後期モデルがオススメ。
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