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比較 997GT3前期・996GT3後期

996GT3 ポルシェ

ポルシェというスポーツカーメーカーの中には、よりスポーツ度の高いグレードが存在しています。今回はその中の1つであるGT3について掲載していきます。

まとめ
  • GT3はスポーツカーメーカーのポルシェの中でもよりスポーツ性の高いグレード。

  • 996GT3前期の登場インパクトが強く、それの改良モデルである996後期の評価が総じて高い状況。

  • 997GT3前期については、電子制御が増えたことなどにより安定志向のクルマとなっており、中途半端なポジショニングになってしまいっている。

  • この頃からのポルシェ選びは、優先事項を何にするかで評価が変わる時代へと突入している。

GT3とは

ポルシェはそもそもがスポーツカーメーカーですが、その中でもよりスポーツ度の高いグレードに、ターボ・GT2・GT3・GTSなどが存在しています。GT3は自然吸気エンジンの中で最上位のスポーツモデルとなっています。

GT3各モデルのポジジョニング

今回は996後期と997前期の比較をしていきます。

一番ポルシェらしい独特な味わいがあるのは996GT3前期モデルです。固く締め上げられて首都高速あたりでは跳ねてしまうような足回り。ガソリンスタンド・コンビニなどに入るたびにアゴを擦ってしまうほどに低めれらた車高やスポイラーなどハードコアな仕上がりでした。

これに安定感と乗り心地をプラスし、明らかに公道での使用にも耐えるような仕上がりとなったのが、996GT3後期モデルです。

GT3で最も重要な速さもこのタイミングで向上され、このモデルからカタログモデルとしてラインナップされているのも特徴です。

このように同じ996型でありながらも、両車のポテンシャルの差は大きく開いています。

996GT3サイド

なお、997GT3前期モデルは、997GT3後期モデルと大きく性能差がある上に、996GT3後期モデルとの差も少ないことから微妙なポジショニングとなってしまっています。

エスクテリアについて、普通に考えれば996GT3後期モデルよりも、997GT3前期モデルの方がスタイリッシュではありますが、996GT3のインパクトが強かったことから、その点も今となっては大きなアドバンテージとはならないのが現状です。

997GT3

エンジン

996型・997型ともノーマルのカレラはエンジンが水冷化されていますが、GT3は両モデルとも空冷エンジン用のエンジンブロックを採用しています。

なお991型からはGT3も水冷エンジン用のエンジンブロックを採用することとなりました。

996GT3前期と後期を比較すると、無段階バリオカムや電子制御スロットが大きく貢献していることがわかります。

レブリミットが7800rpmから8200rpmへと高められ、ポルシェの市販ロードモデルとして初めて8000rpmを超えることとなり、最大出力/最大トルクは360ps/37.7kgmから381ps/39.2kgmへと向上しています。

同じ排気量のままで過給機に頼らずパワーを上げていくとなると、エンジンの高回転化をする必要が出てきますが、GT3の進化・改良はまさにその道を辿っています。

996GT3後期と997GT3前期では、エンジンの回転リミットが200回転高められていることもあり、高回転域のパワー感は997GT3に分があります。

しかし、低回転域からのトルク感とレスポンスは、圧倒的に996GT3の方が走りやすいといいます。 

996GT3リア

ドライビングフィール

996GT3はクルマ全体の軽さが感じられ、ハンドリング面においても997GT3をしのぎ、シャープで気持ちの良い走りが楽しめます。

ボディ・ブッシュ・シャシーの剛性感は996GT3が劣っていると言えますが、車両重量が20kg軽いため優れたドライブフィールを実現しています。スポーツカーにおいては軽さが重要であることを再認識します。

997GT3の場合、可変ギアレシオのステアリングギアボックスを採用したことにより、曖昧なハンドリングと評価されてしまうこともあります。

また、997GT3は高回転に従うにつれて生じるノイジーな排気音の影響もあり、エンジンフィールも996GT3に劣ってしまいます。

997GT3には可変エキゾーストバルブが装備され、そのエギゾーストノートがドライバーを心地よくさせてくれますし、日常での使い勝手という意味では便利なアイテムなのですが、スポーツ走行においてはさほどメリットがないようです。

996GT3

足回り

足回りも996GT3の方が優れており、997GT3にはマイナスポイントがあります。それはPASMによる可変ダンパーのセッティングがワインディングにはフィットしていないことです。

ノーマルモードではフワフワ感が拭えず、スポーツモードでは硬すぎて跳ねてしまう。どっちつかずの可変ダンパーとなってしまっています。

ただノーマルモードのセッティング自体は決して悪いとわいえず、低速度域で安楽に走りたいという状況においては問題がありません。

ブレーキ

ブレーキフィールは効きが良い997GT3に対して、リニアなタッチが良好な996GT3という違いがあります。

ブレーキに関しては好みによるところが大きいことと、効きもフィールも変更することが比較的容易な部分もあるため、2モデルに大きな差がないといえます。

シフトフィール

997GT3は996GT3のゲトラグ製6速の改良版となっています。997のカレラシリーズに搭載されるアイシン製の6速マニュアルトランスミッションとは異なります。

シフトフィール含めて996GT3よりも優れた印象がありますが、操作性は明らかに996GT3に軍配が上がります。シフトストロークは自体は997GT3の方が15%も短くなっているにもかかわらずです。

安定感

ここまで全体に渡り996GT3の方が評価が高い状態ですが、997GT3の方が優れてる部分はどこにもないのでしょうか。

もちろんそのようなことはありません。ボディ剛性の高い997はジオメトリー変化が少ないためか、特にフロント周りの安定性が優れています。その恩恵は直進時に現れ、長距離移動というシチュエーションでは997GT3に軍配があがります。

つまりグランツーリスモとしての優位性や、より多くの場面で走りを求めるなら997GT3。サーキットやスポーツ走行を求めるなら996GT3に分があるという状況です。

997GT3

まとめ

996GT3後期の評価が全面的に良い結果となりました。

これはスポーツカーは軽くて、電子制御が多く関与しない方が楽しいということなのではないかと思います。

一般的な性能は997GT3の方が良いでしょうし、当然その後に出ている991・992の方が良いことに疑いはありません。

これからもドンドン速くて、快適なクルマが出てくるでしょうが、996GT3のようなクルマが出てくることはほぼ無いため、一定の評価をされ続けるのでしょう。

ただ、それを極めると964RSの方が良い、といった極端な話になってきそうな気もします。

各車のレベルが高いものとなり、クルマの性能が差別化しにくい現代では、何を優先するかでクルマの評価が大きく異なる時代になってきていると実感できます。

997型のグレードが多岐に渡るのはこのあたりが大きな理由なのかもしれません。

997GT3

スペック比較

996GT3997GT3
全長×全幅×全高(mm)4435×1770×12754450×1810×1280
ホイールベース(mm)23552355
トレッド前(mm)14901500
トレッド後(mm)14901525
車両重量(kg)14001420
最高出力(ps/rpm)381/7400415/7600
最大トルク(kgm/rpm)39.3/500041.3/5500
総排気量(cc)36003600
タイヤサイズ前235/40/ZR18235/35/ZR19
タイヤサイズ後295/30/ZR18305/30/ZR19
最小回転半径(m)5.35.1
価格(万円)14191575

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